物流「コスト」でなく「税」として考える
2019年10月 8日 13:59
先日、ある生地メーカーの展示会にお邪魔して、社長と話をしていたときのこと。
紹介された生地は、定番をリニューアルさせたそうだが、
従来より37%軽量なのだと説明を受けた。
たいていは糸の量で重量が決まるわけで、同じかそれ以上の品質を担保しながら、
4割近く軽量化させるのは、いかに大変なことかは容易に想像がつく。
すごい技術ですね、と感心していたら、本当の理由が実に興味深かった。
「重いとね、運送屋さんが持って行ってくれないんですよ。」
たいてい路線便の集荷というのは、特別に指定しない限り、
その日の夕方から夜に行われている。
受注した商品の伝票処理をして、商品を準備し、送り状を張れば、
概ね出荷業務は完了し、集荷場所へ置いておく。
しかし、だ。
近年、運送業者からその場で「引き取れません」と言われるのだそうだ。
メーカーとしては、それはマジでかなわない。
今日出荷して、明日、遅くとも明後日までには納めてもらう段取りをしているし、
仕入れ側だって、当然そのつもりで生産ラインの準備をしている。
そこにきて、この期に及んで持っていけないと言われたら、
顧客との信用問題にかかわる。
ただ、文句を言っていても、物は動かないから、
結果、彼らは、自社の営業が荷物を持って走ることになる。
さらには、一つの業者では断られるから、複数の業者へバラバラに荷物をいれ、
別々の伝票で配達をしてもらう段取りをしていたこともあるそうだ。
信頼獲得のために、そこまでしていた生地メーカーには頭が下がるが、
そうでもしないと、商品を届けることができないのが現状でもある。
件の社長が誇らしげに話してくれた意味が、ようやく理解できた。
定番品の、目に見えないコスト削減が達成できたのだから、
大げさではなく、万感の思いであったのだろう。
さて、最近では、モノづくりに対する価値感が、
一様に下がっているのではないかと危惧している。
何より、我々がその境遇に身を置いて感じているから、
なおさら死活問題どころの騒ぎではないのだ。
このことを疑問に思ってほしい。
一つの商品をつくるために、あらゆる材料を仕入れて加工して製品にする。
当たり前の話だが、それらは方々から配送されてくる。
売上に対する荷造運賃(物流コスト)は昨年と比べ、5%から6%へと上昇した。
たかが1%だが、上昇率は20%なのだ、すべての物流で。つらくないですか?
商品価格に転換すればいいが、ご存知の通り、世の中そんなに甘くない。
通信業界では、データのやりとりが著しく発達し、
それにかかるコストは、何十分の一になっているだろう。
ひょっとしたら、何百分の一かもしれない。
Amazonや楽天がドローンでの配達実験に余念がないし、
物流網を効率化させるために、企業買収などの投資をしている。
ただ、それはあくまで個人客相手のものだ。
もちろんそこから便利になることは大いに賛成だが、
10キロの反物を20反も50反も一度に運べはしないだろう。
モノが物理的に動くには、どれほどIT、AI、IoTなどの技術が発達しようと、
中小零細メーカーの物量では、人の手は必ず必要になる。
少し前にこれらに関する動きもあったが、一向に改善されていない。
少なくとも我々の肌感としては。
誤解のないようにだが、決して物流業者を批判したいわけではない。
彼らも血のにじむ努力を続けることは想像に難くない。
であるから、すべての「送料無料」制度を禁止してはどうだろう。
そして、この際、消費税くらい、別個で徴収する。
もちろん極論ではあるが、物理的にモノが動かないと成り立たないのであれば、
物流コストは、そのくらい別ポジションをとってもらっておいた方がいい。
ちなみに、海運業はどうかというと、価格は上がっていないそうだ。
ますます日本のモノづくりは、厳しい局面を迎えているといえる。
まくらのキタムラ
北村圭介
【参考文献】
楽天市場のこれから 三木谷 浩史氏が語る
「物流へ2000億円投資」「送料無料ライン」「ZOZO追撃」他 (1/2)
アマゾンジャパン スピード配送を縮小へ、対応エリアは都内10区のみに、
マツキヨの配送代行も中止
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物流システムだった?=シバタナオキ
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北村 圭介
株式会社キタムラジャパン
代表取締役
大正12年創業の枕専門メーカー「枕のキタムラ」4代目。曾祖父から伝わる経験やノウハウを活かし、眠りに対するキタムラのエスプリを枕にしています。枕屋4代目のブログ「まくろぐ」では、枕のことがメインですが、睡眠やモノづくり、マーケティングなど独自の想うことを書きます。