トップ > 経営 > 名うて経営者の、人を育てる極意
名うて経営者の、人を育てる極意
経営者の仲間10名程度で、アジアへ研修旅行に行った。
基本的にバスで移動となるため、長い時間、いろいろな話をする機会も多く、
それだけでもとても勉強になる。
70歳を超えたある経営者Aさんは、一代で上場をさせ、莫大な資産を築いたものの、
それを、子供に残すつもりは全くないという。
今は、後世に伝えるべく、若者へ積極的に投資をしている。
女に惚れるよりも、男に惚れるとタチが悪いんだよ、と笑って話す姿が印象的だ。
さて、そんな折り、「ASEAN」について話題になった時のこと。
一人がこんな話をした。彼を、Bさんとしよう。
空港の列で、右がASEAN、左はそれ以外というレーンがあって、
近くにいた老夫婦が「私たちはどっちなの?」と喧々諤々やっているのを見かけ、
その人は「(日本はASEANだろ。何をいまさら言ってるんだ)と思いましたよ。」と。
(あれ、いや、日本は、ASEANじゃありませんよ。)と思ったわけだが、
その時は、ふんふんと聞き流した。
そしたら、Aさんがこう切り返したのだ。
「そうか。あれ、ASEANって、そもそも何の略なの?」
Bさん「ん?そういえば、なんでしたっけ?」
隣にいた私がググってみたところ、「東南アジア連合」ですね。
Aさん「そうかぁ。あれ、東南アジアだから、日本入るんだっけ?」
Bさん「あ、日本、入ってなかったですね。」
Aさん「そうだね。」
会話としてはそれっきりで、別の話題になったのだが、
「この人、すごい正し方するな」と頭から離れなかった。
ASEANも知らんのか、ということは、この際、置いておいて、
Bさんの話を聞いた時点で、AさんはBさんが間違っていることに気づいていた。
ただ、頭ごなしに「あんた、間違ってるよ」とは言わない。
結果的に、Aさんが気づいて訂正したのだ。
また、空港に着くや、「タイの両替は、地下にレートのいいところがあります。」と、
両替役を買って出た人がいた。彼はタイに会社もある人物で詳しい。
もちろん我々は、それはいい情報だ、と彼に頼った。
ただ、行ったきり、30分経っても一向に帰ってこない。。。
各々、wifi設定やら、メールチェックやらを済ませて待ちくたびれていると、
「列が混んでて、時間かかってすみません!」と、ようやく返ってきた。
確かにレートはよかった。
しかし、日本円にして、数百円程度の違いである。
団体で、その間、待っているのと比べ、どれほどの価値があるのか。
そんな時も、Aさんは笑顔を浮かべ、
「時間、かかったろ?悪かったな。ありがとうな。」
私の思い過ごしかもしれないが、
彼は、こんな調子の人だから、ほとんど間違いなく意図的にやっていると思う。
きっと、Bさんは、自分の間違えに「自分で」気づいたと思っているし、
両替をしに行ってくれた彼は、仲間に貢献したと思っているに違いない。
間違いを訂正するだけなら、「違うよ」といえば、カンタンだ。
しかし、プライドのある人やよかれと思っている人に対しては、どうだろう。
コミュニケーションは一方通行では成り立たない。
常に相手の気持ちになって接することが大切なのだと考えさせられた。
まくらのキタムラ
北村圭介
トップ > 経営 > 名うて経営者の、人を育てる極意
北村 圭介
株式会社キタムラジャパン
代表取締役
大正12年創業の枕専門メーカー「枕のキタムラ」4代目。曾祖父から伝わる経験やノウハウを活かし、眠りに対するキタムラのエスプリを枕にしています。枕屋4代目のブログ「まくろぐ」では、枕のことがメインですが、睡眠やモノづくり、マーケティングなど独自の想うことを書きます。