私事ですが、全身麻酔を伴った手術を行い、しばらく入院する機会がありました。術後の痛みや不自由さは想像を絶しており、その晩、(このままで夜を越せるのだろうか。。。)という不安と恐怖に苛まれながら、寝ては起きて、起きては寝てを繰り返しました。身をよじりながら苦悶し、しかし、気が付くと、暗い夜は明けて清々しい朝を迎えていました。あの日、病院の窓から見えた朝日が忘れられず、乗り越えられた安堵と「生きているんだ」という実感、さらに、純粋にそのことに対する感謝の気持ちが溢れ出てきました。平凡な人生こそ、実はとても価値があるのだと。
私たちキタムラは、愛知県三河地方からの綿布の買い付けを祖業とし、やがて寝装品の製造を始め、枕の専門メーカーとなり、おかげさまで100年が経ちます。これまでに多くの方々に支えられて、様々な試行錯誤と紆余曲折を繰り返してきましたが、初代・貞吉の時代から、お客様の目線に立ち、その時々の課題に真摯に立ち向かってきたからこそ、ここまで続けられたのだと自負しております。
今、世界規模で広がった感染症をきっかけに大きな岐路に立たされています。そして、私たちは膨大な情報の中から、常に取捨選択を迫られています。「ビジネスで世界を変える!」などと大それたことは申し上げられません。しかし、そんなヒリヒリするような「刺激」を少しでも減らすことはできないだろうか。
他者との差別化を標ぼうすることで、自身の優位性を訴える世の中になりつつありますが、自分たちの大切にするものを、関わる人たちと共有して紡いでいくことで「あり方」を示したい。毎朝、そう言い聞かせて、次世代へとバトンを渡せるように、毎日楽しみながら挑戦を続けていきます。